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第10回 : ケーススタディー前編~レストラン開業~

このコラムでは、ハワイへの進出、又はハワイでの起業に際して必要となる「拠点」、不動産用語では「箱」などとも呼びますが、「大事な自分の城」となります。その選定、確保、開業まで不動産屋の視点と言葉でアドバイスします。

アロハ~。スターツハワイの池田多聞です。早いですね~。第三四半期突入です。あとはハロウィンで仮装して、サンクスギビングで七面鳥を焼いて、クリスマスを祝えば、2016年も年末のカウントダウンに入ります。今月は、下旬にホテルとゴルフ場系の大型案件で日本へ出張しますが、今回のテーマは、標題の通り「レストランの開業」です。

カフェやレストランをオープンする!

クライアント紹介
King通りにある人気店「やきやき三輪」で記念撮影!

この頃、凄く要望が多いのが、隠れ家風のカフェ、またはレストランを開業したいというパターンです。このご希望は、予算に制限があり、通常のリースで実現されたい方、資金は潤沢なので、Fee Simple(土地付きの不動産所有権)の物件を購入し、大改修も視野に入れる方などさまざまですが、ハワイで実現するのは非常に難しいコンセプトであるといわざるを得ません。まず、日本との大きな違いに用途規制(Zoning)の厳格さがあります。 ハワイの場合、住居地域はR(=Residential)、商業地域はB(=Business)で明確に区分けされており、両方OKなBMX(Business Mix)などはKing、Young、Beretania通り沿いなどの一部にほぼ限定されます。ですから、R-ZoneのKalanianaole Hwy沿いの某教会横で邸宅Weddingを営む業者などもいますが、明らかにグレーで、何らかの既得権が確認できない限り、僕のクライアントには紹介できません。

開業するまでの流れ

僕も以前、ハワイカイにあるPortlockの豪邸を管理していた事がありますが、テナントさんがプロのエンターテイナーで、毎週末、彼女のお客を呼んで宴会をしたため、隣人からのクレームで警察沙汰となり、その類の行動を一切慎むよう規制したことがありました。すいません、ちょっと脱線してしまいました。さて、今回の本題であるレストラン開業につき、僕のクライアントAさんが1,000sf(約28坪、93平米)の居酒屋をKing通り沿いで開業するまでの流れについてご説明させて頂きます。大きくは以下の3つのステップが必要となります。

開業への3ステップ

  • 1)物件の確保
  • 2)当該物件の改修
  • 3)営業許可(リカーライセンスも含む)の取得

1)物件確保はまさしく僕の担当分野ですが、a)居ぬき物件、またはb)改修可能物件を探します。物件確保ができた場合、a)居ぬきでも全く手を加えない場合は稀だと思います。 当然、b)改修の場合は建築許可取得につき、ホノルル市に申請が必要です。今年の11月に市長選挙がありますが、現市長は滅茶苦茶なレイル事業財源維持のため、さらに固定資産税率を上げると豪語(不動産業界の敵)しているので落選すれば良いのですが(あくまでも個人的な意見ですのでご了承くださいね)、同市管轄の許可申請の遅さも最悪です。 もともとホノルル市の許認可の遅さは兼ねてから問題で、建築許可申請図面のうち、同市の担当が本来行なうべき、(さすがに)消防を除く、電気(Electrical)や配管等(Mechanical) の精査はThird Party(市が指定した第三者機関)に行なってもらい、認可プロセスを早めれば申請から4か月程度で許可を取得できるというのが、数年前までのスケジュールでした。しかし、現在、1)カカアコの高層コンドミニアムプロジェクト、2)①ワイキキの各ホテル改装、②リッツカールトン建設、③インターナショナルマーケットプレイスの再開発および、それにかかわるテナント内装工事が重なったため、建築申請からの同許認可取得まで、どれだけかかるのかが分らない状態です。

この現状を考慮すると、上記a)居ぬき物件を建築許可なしで済む、マイナーな手直し工事で開業に漕ぎ着けるというのがベストかと考えます。また、今回Aさんは居酒屋を営むので、既存のリカーライセンスがあればベスト、もし無くてもADA(米国身障者法)に適合した男女のトイレが店内、または共用部分100ヤード以内にある旨確認が必要です。尚、上記2)の正規改修に関しては、通常、建築許可が必要な場合は同申請した時点で着工を開始するのが常です。Demo Permit(解体の許可)とConstruction Permit(建築の許可)をセットで提出します。前者はすぐ許可が下りるので、それをベースに現場には張り紙をして、壊しているのか、作っているのかわからなくして進めるのが一般的です。ホノルル市の役人も自分達のせいで、申請プロセスが遅れてしまっている事は自覚しています。よって、同市のInspector(検査員)もこのやり方については比較的寛容です。

また、3)営業許可は使えないホノルル市の管轄ではなく、ハワイ州が請け負うので、そのスピードはかなり異なりますし、とても親切です。日本で言う営業許可、Food Establishment Permitは管轄する州保健局(Department of Health)が発行しますが、電話をしてアポを入れたら数日内に現場に来てくれます。そこで、冷蔵庫の温度や衛星面の検査をするのですが、たとえ1回目でNGが出た場合でも、問題点を指摘してくれて(例:指定衛生サインの掲示、ハンドソープの設置位置など)、それがクリアーになれば、翌日にも再検査してPermit(いわゆるGreen Card)を発行してくれます。

リカーライセンスも州管轄なので、スケジュールはハッキリしています。申請を決めてから通常リカー専門の弁護士に同取得業務を依頼します。弁護士費用の相場は$5,000~$6,000で、まず出店場所の近隣にPublic Hearing(公聴会)の案内を出します。このFeedbackをもとに、第1回公聴会がDowntown近くのLiquor Commissionで開催され、ここで問題なければ、この開催から8週間後に第2回公聴会が開催され、即日Liquor Licenseの発行となります。License料自体は比較的廉価でGeneral(酒類何でも提供できて、営業2amまで)で年間$1,000強です。尚、リカーを提供する現場には、同Commissionが定めるBlue Cardなる資格保持者が必要となりますので、その旨確認が必要です。リカーライセンスは基本オーナーのAさんに下ります。指紋採取もあり、その結果、日本での犯罪歴があると許可が下りませんので、そこもしっかり調整下さい。

次回は、Aさんが居酒屋を開業したその後についてお話しします。