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第7回 : ハワイ不動産の契約締結に際して

このコラムでは、ハワイへの進出、又はハワイでの起業に際して必要となる「拠点」、不動産用語では「箱」などとも呼びますが、「大事な自分の城」となります。その選定、確保、開業まで不動産屋の視点と言葉でアドバイスします。

アロハ~!スターツハワイの池田多聞です。なんと、2016年も上期が過ぎ去り、僕も7回目の原稿を仕上げ、よくここまで続いたなと…。ただし感慨にふけっている暇はありません。イギリスがEU離脱を決めた影響で、僕の提唱する1ドル=100円が現実化しつつあります。私見では、1ミリオンドル超えの物件を物色される方は、1ドル=120円の時でも関係ない感じでしたが、今後は、予算10万ドルから20万ドル予算の方達も、ハワイへの投資意欲がメラメラ燃えるのではと予想します。

不動産にかかわる契約とは

移転改装中の『ナリス化粧品サロン』にて、小池社長と記念撮影!

さて、今回は不動産にかかわる契約について、ご説明したいと思います。まず住宅に関してですが、ハワイ不動産協会(Hawaii Association of Realtors)が定めるさまざまな定型フォームが充実しており、各エージェントもそれを使用するため、非常にわかりやすく、トラブルも少ないと思います。例えば、物件購入に際しては、売買契約書(Purchase Contract)を用いますが、これは正式な契約締結の前の購入申込書にも有用されます。売買契約書という名称ですが、これを相手側に送付した時点では、先方が拒否する可能性もあり、単なる要望書(Offer)という扱いです。これに条件交渉をする場合は、定型フォームのCounter Offerというものがあり、これがPurchase Contractの付属契約として活用されることとなります。双方がこうした書類に合意し、締結した段階で初めて法的拘束力のある契約書となります。

ビジネス弁護士による精査を!

誰にでも分かりやすく、とても良くできたシステムだと思いますが、これが実は商業不動産には当てはまらないケースがほとんどなのです。前述のホノルル不動産協会が提供するフォームも売買に関しては、Commercial Real Property Purchase and Sale Agreementというものがあるのですが、賃貸のそれも合わせて、多くの不動産会社、エージェントがそれよりも自分のフォームを採用する傾向にあります。申し込みの段階では1.Offer、2.Proposal、3.Letter of Intentなど、各社それぞれの呼称とフォームがありますが、全て実質的な内容は同じで、法的拘束力のない要望条件の提示書です。この段階においては、契約当事者、契約期間、基本賃料、共益費、敷金など、基本的な条件(Salient Condition)が明記され、それを交渉するというプロセスが取られます。後述しますが、正式なリース契約書の中で一番重要なのがこの部分なので、これらを反映したBusiness Provision、Specific Termなるリース契約書の最初の数ページはしっかりした精査(Review)が必要です。基本的な条件交渉が済み、上記のOffer等の締結=合意が済むと、リース契約書案(Draft)の作成に進みます。このDraftは、賃貸の場合は貸主、売買の場合は売主の弁護士が準備するのが通例です。これにサインしたら、法的拘束力のある文書になりますので、ご自身の弁護士に精査を依頼した方がよいと勧めるのですが、上述したBusiness Provisionについて詳細を僕が説明すると「よし行こう」とそのままリースにサインされる方も多くいらっしゃいます。僕は、条件交渉を経て、Business Provision(具体的なリース条件)には自信を持って精査し説明しますが、その後のGeneral ProvisionやGeneral Termに関しては、法的側面(Legal Aspect)もあるので、余裕があればビジネス弁護士を雇い、全体を精査してもらった方がよいかと思います。商業リースの契約書は、個人ビルで10~20枚、通常のオフィスビルで30枚~40枚、有名ショッピングセンターや一流ホテルのそれだと60枚超にも及びます。しかし、重要なのは、繰り返しになりますが、最初数枚のBusiness ProvisionやFloor Plan、そしてさまざまな個別条項の付いた添付契約書(Exhibit)で、真ん中のGeneral Provisionは、言ってみれば、担当弁護士がそれぞれのスタイルで常識を記載するもので、要求される保険金額の条項以外はあまり気にしなくてよいかと思います。

事業者の個人保証について

また、契約締結に際してはほとんどの場合、事業者の個人保証を要求されますが、これも日本のそれとは随分と異なっていると思います。日本の場合、事業に対して個人保証した方が、その失敗で責任を感じて自殺されるなどの報道を見ますが、アメリカではそれほど気にすることはないかと思います。現に、今大統領選でブイブイ言わせているトランプさんも、何度も事業で失敗しているのに、その責任を巧妙に逃れて現在に至っています。具体的に言えば、アラモアナセンター(AC)でリテイルリース契約した日系企業の社長Aさんが、個人保証にサインしたとしても、Aさんの資産が全てアメリカ以外であれば、Aさんの事業が失敗してもGeneral Growth(ACのオーナー)は上記資産には手を出せないのです。また仮に、Aさんがハワイで住居用のコンドミニアムを所有したとしても、それを夫婦名義で所有していれば、Aさんの奥さんまでしっかり保証を差し入れていない限り、General Growthは債権者としてその物件に手を伸ばすことはできません。僕もワイキキの旧ANAビル(現BOHワイキキセンター)の責任者として常時約30のテナントさんを管理させて頂きましたが、個人保証をベースに債権を取り立てたのは10年で2件、その内、ある程度、事業者(個人)から回収できたのは1件だけでした。それぐらい、アメリカは新規ビジネスに寛容なのかもしれません。なので、アイデアのある方は、ぜひ挑戦してみて下さい。